ローマ法王の難民受け入れ思想。アルゼンチンなど南米びいき?

4 min

2019年11月23日。

ローマ法王が38年ぶり、2度目の来日を果たしました。天皇陛下との面会をはじめ、様々なイベントでお祭り騒ぎ。ローマ法王は広島と長崎の被爆地を訪れて、核兵器の廃絶と大量破壊兵器の製造・販売を批判もしています。

さらに11月25日には「青年の集い」という集会で、日本は在留資格のない外国人や難民の受け入れに厳しすぎるから、もっと彼らを受け入れましょうと話しました。
核兵器や大量破壊兵器の廃絶、難民を助けようといったメッセージ。

これだけ聞くとローマ法王は平和のシンボルだと思ってしまいますね。でも、ローマ法王の真意を探れば「ずる賢い政治家」の面が見えてきます。今回はローマ法王のメッセージから彼の真意を考えてみます。

スポンサーリンク

ローマ教皇とは

日本では「ローマ法王」と言われてますが、バチカンでは「教皇」

日本政府も今回の来日をきっかけに「教皇」の名称に統一しました。以下、ローマ教皇とします。

ローマ教皇とは、ローマ・カトリックという宗教のリーダーであり、同時にバチカン市国という国家のリーダーをいいます。
ローマ・カトリック(以下、カトリック)というのは、キリスト教の一派。世界中に約12億人の信者がいる世界最大の宗教です。そのリーダーである教皇の権力は強大で、小さな紛争ならその一言で仲直りさせれるほどの力をもっているそうです。

バチカン市国とはイタリアの首都ローマの中にある1つの国です。日本とは1942年に国交が結ばれました。教皇はこの国のいわば大統領の立場でもあるのです。つまり、教皇には「宗教指導者」と「政治家」の2つの顔があるわけです。

では、現教皇フランシスコとはどのような人物でしょうか。その人物像を探ってみます。

教皇フランシスコとはどんな人物?

フランシスコは南米アルゼンチンのブエノスアイレスで産まれ。

現在83歳、2013年にローマ教皇に選ばれました。
彼はカトリックにおいて異例の教皇と言われています。彼はアルゼンチン人ですが、南米出身の教皇はキリスト教史上はじめての人物。

また、彼はブエノスアイレスの教会でずっと勤めてきた人物で、バチカン内部から教皇が選ばれなかった初の教皇でもあります。
主に南米出身の人をヒスパニック系と呼びますが、フランシスコはヒスパニック系の教皇で、しかもバチカン外部から選ばれた教皇という特殊な教皇といえます。

そしてフランシスコは教皇になる以前から、難民受け入れ運動について励ましの言葉を送っていました。このような人物が教皇になれば難民受け入れのメッセージを世界に発するのは当然です。

そして、フランシスコが日本で行った演説がアメリカ国民に影響を及ぼしました。その演説について考えてみます。

ローマ教皇によるアメリカ批判

教皇が広島でした演説は、

「核兵器の脅威に対しては、一致団結して応じなくてはなりません。」

でした。

教皇が長崎でした演説は、

「大量破壊兵器を製造・維持・販売する企業が富を得るのは、天に対する冒とくである。」

でした。

宗教のリーダーとしての平和のメッセージと読めますよね。でも、読み方によっては核兵器や大量破壊兵器を多く持っている国への批判ともいえます。

この点、文化史学者の竹下節子さんは、「フランシスコは南半球出身の教皇で、アルゼンチンの貧しい人たちに寄り添ってきた教皇だ。だから富を多く持っている北半球の裕福な国を批判している。」といっています。

しかし、政治活動家のKAZUYAさんは、「核兵器廃絶はアメリカだけではなく、中国や北朝鮮にも言うべきだ。」としてフランシスコのメッセージを批判しています。
産経新聞2019年11月24日の記事には、

「ローマ法王、中国・台湾・香港へメッセージ。香港デモには言及せず。」

とあります。

もし、フランシスコが世界中に平和のメッセージを伝えるならば中国政府による香港デモについても、それをやめるように言うべきでしょう。
しかし、去年の9月からバチカンは国交断絶の状態だった中国と対話路線に変わりました。中国とはケンカしたくない、だから香港デモについてはなにも言わない、とフランシスコは考えたのではないでしょうか。

現在、核兵器や大量破壊兵器を多くもち、かつ、裕福な国はアメリカと中国に限られますね。そしてフランシスコが中国を批判しないということは、核兵器などの批判はアメリカに対するものだと思われます。

では、フランシスコのメッセージに対して、アメリカ国民の反応はどういったものなのでしょう。それについて紹介します。

スポンサーリンク

アメリカのネットユーザーの反応

アメリカのネットユーザーの反応は、フランシスコは平和のメッセンジャーだ、感動したといった肯定的なものから、キリスト教が戦争を巻き起こしているのにきれいごとを言うなといった否定的なものもあり、肯定・否定が半分半分といえます。

中には、イエスは社会主義者だからといった的外れの批判や、日本は核兵器を持っていないのに核廃絶をいっても仕方がないじゃないかというフランシスコのメッセージを理解していない人もいました。
しかし、もっとシリアスな問題はアメリカに多くいるカトリック信者の意見が割れたことです。これにより、トランプ政権にダメージが生じました。

つぎにアメリカにいるカトリック信者の影響を考えてみます。

アメリカにおけるカトリック

アメリカにも多くのカトリック信者がいます。大きく分けてこのようになります。

①裕福な保守層
②ヒスパニック系

まず、①の保守層ですが、アイルランド系など「白人」と私たちが呼んでいる人たち。

彼らは代々アメリカで暮らし、どちらかといえば裕福なアメリカ人といえます。そして、バチカンは彼らの莫大な寄付金に依存しています。

これらの保守層はフランシスコの演説はアメリカに対する批判だと怒り、バチカンだって武器売買のお金でもうけているじゃないかと、フランシスコに対してカンカンになっています。
一方で、②のヒスパニック系ですが、彼らの多くはメキシコをはじめとした南米から不法に移民してきた人たちが多いのが現状です。とくにヒスパニック系ギャングはアメリカ最大の犯罪集団としてアメリカ国民からは問題視されています。

トランプ大統領は選挙公約としてメキシコ国境に壁を作って不法移民を阻止するといいました。実際、国境沿いに壁を築いています。つまり、トランプ大統領の第1の目的は南米からの移民を阻止したいわけです。

しかしヒスパニック系はフランシスコを応援し、アメリカに移民受け入れを望みます。
このようにアメリカのカトリックはフランシスコのメッセージを、保守層はアメリカへの批判、ヒスパニック系は移民をもっと受け入れる追い風ととらえています。カトリック内部において政治意見が分かれたのです。

もし、フランシスコが政治家としての顔でメッセージを発していたら、それはアメリカへの移民受け入れ、もっと想像すればフランシスコのルーツであるヒスパニック系移民の受け入れを狙ったものかもしれません。

フランシスコの経歴やルーツからすると、日本は難民を受け入れよというメッセージは日本に対するものでなく、アメリカの南米からの不法移民阻止政策への批判と考えられるのです。
私の考えは決して憶測とはいえません。ある事件を紹介します。去年の夏にバチカンの駐米大使が教会の腐敗を指摘して、フランシスコの辞任をもとめるという異例の事態が起きました。

そもそも教皇の辞任を大使がもとめるのは異常です。しかも、駐米大使が行ったという点でアメリカ政府の意向があったとは考えられないでしょうか。

「鳩のように素直に、蛇のようにずる賢く」

これは新約聖書の1節です。なぜこのような言葉を使うのかと言えば、教皇フランシスコのメッセージは表面だけ見れば平和の言葉であふれています。しかし、その言葉をよく考えると、政治家としてのかけひきの面が見えるからです。

核兵器などの廃絶は正しい考えです。しかし、どうしてアメリカに対してだけ批判するのでしょう。難民の受け入れも人道的に正しいです。しかし、そのメッセージはアメリカが抱えるヒスパニック系の難民受け入れにかたよっているのではないでしょうか。
もちろん、フランシスコの発言を言葉通りに受け取るのが人として正しいのですが、「教皇の政治的影響力」を考えると、どうしても自己のルーツであるヒスパニック系への肩入れにも聞こえてしまうのです。

どうであれ忘れるべきではないのは、

「ローマ法王は宗教の元首であり、国家の元首である」

という事実。

ローマ法王と言えば無条件で偉くて尊いものと考えてしまいがちですが、日本の天皇とは違い、バチカンという一国家の元首であり、その利益のために動くことは常に意識していくべきですね。

スポンサーリンク

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です