アメリカのイラン司令官攻撃の理由はなぜ?影響をわかりやすく

イランのソレイマニ司令官が、アメリカ軍に殺害されました。

そして、2国間の戦争どころか「第三次世界大戦」がウワサされるほどの緊張状態になっています。少なくともイランとアメリカの戦争自体は、起きても不思議ではないほどに。

 
なぜ、アメリカはイランの司令官を攻撃したの?

なぜ、それが両国の戦争にまで発展するの?
 

この問題を理解するには、そもそもアメリカとイランはずっと仲が悪いことや、最近も次々と報復合戦していることを理解する必要があります。日本への影響も含めて、わかりやすく紹介します。

コッズ部隊のソレイマニ司令官ってどんな人?

すごくザックリいえば、イランの英雄

イランには軍隊が2つあります。イラン国軍は一般的にイメージする軍隊ですが、もう1つのイラン革命防衛隊は宗教色が強く、しばしば過激な行動を起こして問題になることでも知られます。
 

特に、ソレイマニ司令官のいるコッズ部隊は特殊部隊。

・テロ組織への武器提供&訓練
・アメリカやイスラエル基地への攻撃
・国外の、反イラン派の排除

 
コッズ部隊は戦闘員というより、破壊工作などが中心のスパイみたいなものです。

テロ組織の訓練、と言っても彼らから見れば自分らの教えを守る組織(多少考えが合わなくても、アメリカを攻撃してくれる組織)でもあるので、実際にはテロ組織が部隊の末端にいると考えても良い構成です。

(いや、そもそもテロ組織というのはアメリカが勝手に決めているものであって、イラン革命防衛隊にとっては脅威だと思っていない可能性もあります)
 

ともあれ、ソレイマニ司令官はそんな部隊のトップ。

外国での破壊工作なんて危険性も高いし、さらにはイランが大嫌いなアメリカへの攻撃(基地へのささやかな攻撃程度になることが多いです)をしてくれるなんて、イラン国民からすれば英雄以外の何物でもないわけですね。

最高指導者であるハメネイ氏も、ソレイマニ司令官を名指しで絶賛したこともあります。

 
そんな人物をアメリカは攻撃してしまったわけです。

もともとイラン人は上から下までアメリカ大嫌いなのに、自分たちの英雄をやられたとなっては、一気に報復ムードが高まるわけです。「たかだか、軍の司令官が1人減っただけ」なんて軽い問題ではないわけですね。

イランの2つの軍について

なぜイランはイラン国軍と、イラン革命防衛軍という2つの組織を持っているのか?その理由や、それぞれの組織の違いや特徴についてまとめたので、詳しく知りたい場合はチェックしてみてください。

イランは軍が2つ?イラン革命防衛隊とイラン国軍の違い【コッズ部隊とは?】


 

アメリカとイランの対立の経緯

アメリカとイランの対立が始まったのは、1978年のイラン革命から。

それまでイランには王族がいて新米政権だったのですが、「堕落した欧米の生活に染まってはダメだ!」と宗教家が権力を握ったのがイラン革命。スタートからして反欧米の思想があるわけです。
 

それ以来、イランのトップはずっとイスラム法学者のホメイニー氏。

けど、アメリカからしてみればせっかくの石油産出国が反米化して非協力的になるのは面白くありません。アメリカがイランをいつか潰してやりたい、と考えるようになったのはこの頃からです。
 

実際、1980年に始まったイラン・イラク戦争は表向きは宗教対立(シーア派とスンニ派)ですが、その裏には石油利権が関わっており、さらにイランを潰すため当時のアメリカはイラクを支援しています。

ちなみに、1990年には湾岸戦争が起きてイラクがアメリカにボコボコにされています。これはイラクが石油を求めてクゥエートに侵攻したからですが、その原因は経済難で、その原因がアメリカが支援したイラン・イラク戦争。

おまけに「ナイラ証言」で有名ですがアメリカの正当性を示すためのプロパガンダまで行う徹底ぶりです。(現在、それはアメリカの自作自演だったことが証明されています)
 

核兵器をめぐる対立

イランは、核開発している国です。

それに対してアメリカや西欧諸国が経済制裁を加えるという、北朝鮮と似たようなことをやってる国なわけですね。そして北朝鮮と同じく、大国ではない国が核兵器を持つ理由は「生き残り」しかありません。

 
そもそも、イランは味方が少ない国です。

アメリカは敵。ヨーロッパも戦争となったらアメリカにつく。

周りの中東諸国は、イスラエルはもちろん、同じイスラム国家も宗派が違うので孤立無援状態。

 
そんな孤立状態でも生き残るために始めたのがイランの核開発。

北朝鮮と同じように、核に対する合意(開発を止める代わりに経済制裁を解除する)をしていたのですが、なんと2018年にはアメリカ自らが核兵器を脱退してしまいました。そして、経済制裁を再開しています。

 
これ、何がすごいかって

別にイランは核合意に違反してないのに、自ら決めた合意から脱退した

というジャイアンもビックリな理論だからです。

ちゃんと査察団も「イランは核合意を守っている」と結論を出したにも関わらず、アメリカパワーで強引に脱退。これには核合意に同意していた西欧諸国もビックリです。
 

アメリカが先にルールを守らなかったので、イランも核開発を進めたら、これまたアメリカに非難され、イランもさらに核開発をすすめる悪循環。2020年のソレイマニ司令官の暗殺で、さらに核開発を加速させる可能性が高いです。
 

ホルムズ海峡を巡る対立

ホルムズ海峡はここ。

 
この狭くなっている部分を封鎖してしまえば、ペルシャ湾からの石油輸出はストップします。

そしてペルシャ湾諸国を見ていくと、バーレーン、クゥエート、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦…といかにも石油が出そうな名前ばかり。事実、ホルムズ海峡は世界中に輸出される石油の2割が通過する場所でもあります。
 

そしてホルムズ海峡封鎖は、イランの伝家の宝刀。

問題が起きる度にホルムズ海峡封鎖→原油価格の不安定化につながるので、アメリカとしてはイランがホルムズ海峡を持っているのは面白くない。もちろん世界の原油価格安定も重要ではあるし、できることならホルムズ海峡利権を自分たちが手にしたいという思惑もあります。

 
最近では、2019年6月に日本のタンカーがホルムズ海峡にて襲撃を受けました。

ただ、乗組員の証言とアメリカの証言が食い違うことで問題になっています。

タンカーの乗組員の主張:飛来物(ロケット弾やミサイル等)によるダメージを受けた
アメリカ軍の主張:小型船が吸着爆弾(不発)を外す姿が哨戒機の動画に写っていた

そして、アメリカが撮影した小型船はイラン革命防衛隊のもの。

それだけ聞くとイランが犯人で間違いないように思えますが、そもそも映像自体が極めて不鮮明。それに何の損得感情もないタンカー乗組員の証言である「飛来物」と「吸着爆弾」ではあまりにも違いすぎます。

 
①イランが本当にタンカーを攻撃した
②アメリカがお得意の自作自演をしている

どちらかですね。

 
ただ、イランはアメリカ軍とぶつかったら勝てないので、ホルムズ海峡の民間タンカーを襲うことでプレッシャーをかけている可能性もあり、イランがタンカーを攻撃する筋書きも十分説得力があるものだったりします。

いずれにしても、2019年から今に至るまでホルムズ海峡は不安定になっており、これまた原油高につながる要因になっています。

ホルムズ海峡について詳しく知りたい場合はこちらの記事を参考にしてください。

イランのホルムズ海峡閉鎖の理由はなぜ?日本への影響をわかりやすく
 

なぜ、アメリカは今ソレイマニ司令官殺害したのか?

ホルムズ海峡の問題や、核合意離脱問題。

すでにイランとアメリカの緊張が高まっている中で、「お前の国の英雄殺ってやったで!」なんて宣言したら関係悪化するに決まっています。限りなくアメリカの攻撃の可能性が高くても、否認するのが自然ですよね。

 
ところが、アメリカはソレイマニ司令官殺害をアッサリ認めてしまった。

結局のところ、アメリカはイランと戦争したいのです。

・核兵器を保有する可能性がある国を事前に潰す
・イランを潰してしまえば、中東の石油利権をさらに拡張できる
・イランを潰す=イスラエルやユダヤ人の支持が得られる

特に、2020年に控えている大統領選への影響は大きいですね。

戦争を始めれば支持率は下がるかもしれませんが、絶大な影響力を持つユダヤ人を味方につけられます。また、アメリカの一般人も「イランは悪の枢軸」だと思っているので、単純に空爆するくらいなら支持が落ちない可能性も十分にあります。

(アフガニスタンやイラク戦争で支持率が落ちたのは、どちらかといえば後処理が長引いて人名が失われたり、戦費がかさんだことが問題なので)。少なくとも、トランプ大統領が再戦するまで支持率はそれほど落ちないわけです。
 

そして、それに加えて石油利権もあれば美味しい。

特に、アメリカは今やシェールオイルによって石油産出国になっているので、イランからの輸出をコントロールできれば、自国の石油をもっと高く売れます。正直なところアメリカはイランに対し「手を出してきたら、大義名分を持って全力で攻撃する」機会を待っているような印象です。


 

第三次世界大戦の可能性はあるのか?

100%無いとは言いませんが、限りなく低いです。
 

そもそも、アメリカとイランが戦争状態に突入する可能性自体が低い。

アメリカはイランを潰せるなら潰したいと思っている立場ですが、イラン側もアメリカと戦争すればどうやっても勝てるわけがないのは理解しています。散々、周辺諸国のイラクやアフガニスタンがアメリカによって燃やされてきたのを見てきたわけですし。
 

おまけに、イランは元から周囲に敵だらけ。

イスラエルはもちろん、同じイスラム国家である中東諸国もシーア派国家であるイランにはあまり良い感情を持っていません。特にサウジアラビアはアメリカと割と関係良好なので、仮にイランとアメリカが戦争したらイラン潰しに参戦してくる可能性すらあります。

 
つまり、イランはどうやっても勝てない。

アメリカがちょっかいを出した所で、結局は国を挙げての攻撃はできないし、精々下部組織を使った報復攻撃くらいが限度です。だからこそ、イランは何があってもアメリカの挑発に乗って戦争になるのを避けようとしています。

 
ただ、アメリカとイラン自体の戦争は無いとは言い切れません。

イラン国家自体は戦争する気はなくても、下部組織が暴走してアメリカを攻撃して「あー、手出したからお前悪者だな!!」というアメリカお得意の理論でボコボコにされる可能性は十分にあります。

 
でも、そこで他の国が参戦するメリットが薄い。

サウジアラビアにしてもアメリカに任せておけばイランは自動的に倒されるのは間違いないし、わざわざ自軍の兵士を出兵しなくても…というわけですね。また、EUや中国、ロシアなどの大国も戦争に参加する理由がないわけです。

イランがやけになってイスラエル爆撃する可能性もありますが、それでも結局はイスラエルが戦争に参加するだけですし、それに乗じて中東諸国がイスラエルにターゲットを変えても、結局は中東内の戦争で済みます。

 
今回のアメリカによるイラン攻撃で、第三次世界大戦になる可能性は低いわけですね。

ロシアと中国はイラン寄り?

ロシアはイランと合同軍事演習をしていたり、中国はイランが輸出する石油の1/4程度を購入しているので、アメリカよりもイラン寄りです。今回のソレイマニ司令官殺害に対しても非難していますし。

ただ、それは中国もロシアもアメリカを非難できる大義名分ができるからで、いざイランとアメリカが直接戦闘になった時、そこに割って入っていくかと言えば別。アメリカと戦争なんてしたくないし、この2国が直接戦闘に参加する可能性は極めて低いです。

せいぜい、イランや下部組織に対しての支援が限度ですね。

 

イラン司令官への攻撃による日本への影響

原油価格が上がる

中東危機=オイルショック

もちろんイランも産油国であり、日本の石油輸入量全体の5%程度を占めています。そして5%の輸入が無くなるだけでも、石油を完全に輸入に依存している日本にとっては値上げとしてダメージが返ってきます。

 
それに、イランとアメリカが戦争したからといってイランの石油だけが止まるわけでもありません。

以前も話題になったイランのホルムズ海峡は、中東から石油を輸出する重要な航路で、イランが不安定になるということは、中東からの石油輸入の大部分が不安定になってしまうということです。

 
なので、オイルショックのように石油製品が大きく値上がりする可能性は十分にあります。

日本にもオイルショックの影響が起きた時は、ティッシュの買い占めも起きたりしましたね。それにガソリン代が上がるのはもちろん、原油が上がれば農耕機械や漁船のコストも上がるので、それは価格に跳ね返ってくる…

ぶっちゃけ、石油が上がると色んなものが高くなると思ってください(笑)
 

東京オリンピック中止の可能性も?

これはアメリカとイランが戦争になったら、という場合です。

特に、中東の複数の国が参戦した場合は最悪で、複数の国が東京オリンピックボイコット。結果「こんな時にオリンピックなんてやってられねぇ!」となって中止になるパターンです。
 

ただ、それよりも怖いのが日本への攻撃。

仮にアメリカとイランが戦争状態になったとしたら、間違いなくイラン軍は2020年8月までに壊滅してます。その時、イランがどうやって報復するかと言ったら、アメリカはじめアメリカの同盟国でテロを起こすこと。
 

もちろん、アメリカの同盟国である日本も対象になります。恐らくアメリカと戦争になったとしたら、アメポチの日本は「アメリカを支持する」という立場を取るので、イランにとっては日本はもはや敵同然。

どんな時に東京オリンピックなどというわかりやすいターゲットがあれば、狙われても不思議ではありません。そして、あまりにもリスクが高いと判断したら、東京オリンピックの開催を断念する可能性もあると思っています。
 

…いや、まあ日本から辞めると言うことは無いでしょうけどね(笑)

仮に東京オリンピックが中止になるとしたら、諸外国から「リスクが高いから中止にしよう!ボイコットだ!」と外圧が加わった場合のみだと思われます。
 

イランとアメリカの対立構造を理解しよう

アメリカのイラン革命防衛隊司令官の殺害について見てきました。

 
とりあえず覚えておくべきは、

・今後、石油価格が不安定になる可能性が高い
・2020年8月のアメリカ大統領選前後は特に国際情勢が不安定に
・イランとアメリカの仲の悪さは今に始まった話ではない

といった点ですね。

1 個のコメント

  • ニュースが分からなくて、検索からきました。
    とてもわかりやすかったです。
    他の記事も読ませていただきます。

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